COUNTRY CHRISTMAS
ひとつひとつがホームメイド。
素敵なカントリー・クリスマス。
しあわせなおとなは、クリスマスの想い出をたくさん持っているおとな。しあわせなこどもとは、クリスマスを楽しみに待っているこども。 

 

ケーキランドから見える山々が遠くからだんだんと白くなり、今朝はいちばん近い山のてっぺんも、うっすらと雪化粧。毎年それが合図のように、マダムたちはソワソワしはじめます。とっておきのテーブルクロスを出して点検したり、白いキャンドルを注文したり・・・。それを見て、こどもたちも何だかウキウキしはじめます。
 クリスマス。
そのことばを聞いただけで、ふっと頬をゆるめるおとなたち。胸がドキンとしてしまうこどもたち。
リースを飾り、ツリーを飾り、招待状をつくり、ケーキを焼く。お菓子の甘いにおいがケーキランドをつつみます。
ひとつひとつがホームメイドのカントリー・クリスマス。だからいつも、いろんな想い出がいっぱい。
クリスマスまであと3週間。床屋のラパン家では、ティータイムに集まった隣村の郵便局長、粉屋のジョルジュ、道具屋のムッシュ・ルナール、陶器屋のマダム・ロラン。そしてラパン夫妻が、クリスマスの想い出を語り合っています。ふたりのこどもたち、ミッシェルとニコルもいっしょです。メニューは、アプリコットジャムをたっぷり塗ったバウムクーヘンと熱いミルクティー。マダム・ロランが持ち寄ったツリーや星の形をしたスパイスクッキーもあります。

郵便局長はミルクティーを一口飲むと、ふかふかのクッションにゆったりともたれました。

そうだな、うちが「マリアの宿」になった夜のことを話そうか。
 

わしが小さい頃住んでいたオーストリアでは、家の中に祭壇を作って、村の教会からもらったマリアの肖像画を飾り、マリアを迎える儀式をするんだよ。つまり「マリアの宿」になるわけだ。ローソクをともして祈りの言葉を捧げた後は、みんなでクリスマスのお菓子を食べたり、ワインを飲んだり、歌を歌ったりして過ごすのさ。キリストが誕生した馬小屋のありさまを模型にしたものをテーブルの上において、それを囲みながらね。クリスマスの想い出を語り合うんだ。ところがこのマリアの絵は、1軒の家に2〜3日泊まると次の家へ移っていく。宿をした家の主人が絵をかかえ、男の子たちが雪道をローソクで照らしながら持っていくんだ。こうして何軒もの家をめぐったマリアは、12月24日の夕方、教会へ戻るというわけだ。

『クリスマスの薪(まき)』からボンボンがでてきた時には驚いたわね。
 
マダム・ラパンが、ブルゴーニュ地方で過ごしたこどもの頃のクリスマスを語ります。
 

クリスマスの薪は、果物のなる木の幹や切り株。クリスマスの夜に、暖炉の煙突口の下におくの。そして家族みんなでクリスマスキャロルを歌った後、こどもたちは部屋の隅に行って「切り株がボンボンのおしっこを出してくれますように」とお祈りするのよ。しばらくして薪の近くに行ってみると、本当にボンボンが生まれているの!薪がすももの木の時は干しすももだったし、栗の木の時は栗のお菓子があったわ。実はお父さんがおいてくれたものだと分かったのは、かなり大きくなってからのこと。他の地方では、薪割り台の上に天からボンボンが降ってきたそうよ。
ばらの花やりんごで飾られた『クリスマス・ツリー』をごぞんじかしら。
 
マダム・ロランは、マダム・ラパンの親友です。
 

私のおばあさんが、クリスマスの前になると話してくれたずっと昔のクリスマスツリーの話なんですよ。アルザス地方では、クリスマスの家の居間にもみの木を立て、いろいろな色の紙をばらの花の形に切り抜いたものや、りんご、ウェハース、角砂糖をぶらさげたのですって。これがクリスマスツリーの始まりとも言われているのよ。その美しいツリーはしばらく飾っておいて、公現祭の日にようやくこどもたちが枝をゆすぶって、りんごなどを降り落とすの。木に飾るものは年々増えて、お菓子やおもちゃもつけるようになり、やがて贈り物を降り落とすために枝をゆさぶるようになったのですって。でも贈り物があまりに多くて重くなりすぎたので、ソックスの中に入れるようになったのよ。
道具を作っては各地を旅して商売をしている道具屋のルナールは、ある年のクリスマスをオーストリアのインスブルックで迎えました。
 
インスブルックでは広場に大きなクリスマス・ツリーがたって、そのまわりに『クリスマスの市』が店開きするんだよ。
 
そりゃあ、にぎやかなものさ。ツリーに飾るおもちゃやローソク、わた菓子やチョコレートを売っている。こどもたちは学校の帰り、この市に寄り道をして家に帰るのがうんと遅くなる。お母さんに叱られながらも、毎日寄り道したくなってしまうほど魅力的なんだね。インスブルックのクリスマスは12月19日。夜になると、クリスマスの行列が広場から出発する。先頭はチロルの楽隊のおとなたち、続いてたいまつを持った少年たち、そして60頭の羊と羊飼い、ランタンを手にした少女たち・・。「きよしこの夜」の歌声が響いて、それはそれは夢物語のように美しい光景だったね。

 

粉屋のジョルジュは3切れめのバウムクーヘンを皿にとりました。マダム・ラパンが2杯目の紅茶をついでくれます。ジョルジュは食いしん坊だけど、とても物知りです。
 
クリスマスに桜の花が咲いたら、めでたく『結婚』なんだとさ。
 
ドイツやオーストリアじゃあ、桜の枝を切ってきて花瓶にさし、クリスマスに花を咲かせる風習があってね。特に婚約者同志は恋人の名前を書いた小さなカードを桜の枝にかけて、その枝がやがて芽をふき、花をつけるかどうかを見守るんだそうだ。さぞや毎日、気になったことだろうねぇ。フランスでも昔は、クリスマスの日に食卓に緑があるように、12月4日の聖バルバラの日に、レンズ豆を小皿の中に蒔いて、テーブルの上で育てたそうだよ。
プロヴァンス地方では、クリスマスのミサのとき、一羽の鳥を放してやるだろう。
 
ムッシュ・ラパンが、こどもたちにゆっくりと語りかけました。
 
これはフランスの昔からの風習なんだよ。中世の昔から、祝いや祭りの時に教会の中に鳥を放したそうだが、このプロヴァンス地方では今もそれが続いているわけだ。司祭が竿に体をくくりつけられた鳥を祝福し、解き放してやる。教会のあちこちを飛びまわる鳥は、救いや喜びのシンボルだからね。
それにしても、同じヨーロッパの中でも、ずいぶんクリスマスの祝い方は違うものだね。

サンタクロースは、今年何をプレゼントしてくれるかしら。
 
お姉さんのミッシェルがつぶやきました。
僕は丈夫なシャベルとえんぴつけずり。
 
と弟のニコル。
私はレースのハンカチとクリーム色のかさ。
 
そのとき、ムッシュ・ラパンとマダム・ラパンが小さくうなずいたのに、こどもたちは気がつきませんでした。